US CODRが要求される理由 P&I に加入するだけではダメなの?
なぜ、P&I保険に加入していても、米国の水域に入るためにはUS COFR(Certificate of Financial Responsibility)が要求されるのですか?
通常のP&I保険事案では、衝突、貨物損害、人身事故等を含め、当事者間で過失や責任関係が整理・確定した後に、船主が負う賠償責任をP&I保険が補填するという流れが一般的です。
これに対し、油濁事故は性質が大きく異なります。油濁事案では、過失の有無にかかわらず、事故発生直後から油の除去や環境回復作業に対応することが法的に求められるという「厳格責任」が課されます。
しかしながら、P&I保険は民間の相互保険制度であり、その支払義務や手続きは保険契約およびクラブルールに基づいて運用されます。たとえ油濁事故において厳格責任が認められる場合であっても、米国政府が事故直後に確実に使用できる資金が、「米国の法律」の下で直接的に保証されているとは言い切れません。
米国政府は、油濁事故が自国水域で発生した場合、事故原因や過失の有無、民間保険の支払判断を待つことなく、直ちに油の除去や環境回復措置を実施できる体制を最優先します。そのため、民間保険の枠組みに依存するだけでは不十分であると考えました。
この結果、米国政府は、国際的なCLC体制とは別に、米国国内法(Oil Pollution Act of 1990)に基づき、米国法の下で完全に統制された資金担保制度を構築しました。それが US COFR(Certificate of Financial Responsibility)です。
US COFRは、船主が米国政府に承認された保証人(保険会社または保証会社で米国政府に直接支払い義務がある)と契約し、OPA90に基づく法定責任額までの支払能力を事前に確保していることを条件として、米国政府(米国沿岸警備隊/NPFC)が発行する証明書です。これにより、米国政府は、油濁事故発生時に、事故直後から確実に使用可能な資金を確保し、迅速な対応を行うことが可能となっています。
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