AIとの会議議事録

US COFR(Certificate of Financial Responsibility)が要求されるようになった背景

1989年3月、アラスカのプリンス・ウィリアム湾で、タンカー Exxon Valdez が座礁し、大量の原油が海に流出しました。この事故は、当時としては米国史上最大級の油濁事故で、環境への影響と清掃費用は莫大なものになりました。事故対応の過程で、米国政府は二つの深刻な問題に直面します。第一に、油濁事故が起きたとき、連邦政府が迅速に対応するための十分な財源や仕組みがなかったこと。第二に、当時の法律では、船主や運航者が負う賠償責任の範囲が狭く、被害の全体をカバーできなかったことです。 [uscg.mil]

この反省を踏まえて、米国議会は1990年に Oil Pollution Act of 1990(OPA 90) を制定しました。OPA 90は、油濁事故に関する考え方を根本から変えた法律です。従来は「事故が起きたあとに、誰がどこまで払うか」を考える色合いが強かったのに対し、OPA 90では、事故が起きる前に、責任を負う者が支払能力を持っていることを制度として確認するという考え方が導入されました。 [westpandi.com], [epa.gov]

OPA 90の中核の一つが、「厳格責任(strict liability)」です。油を流したかどうかの過失の有無にかかわらず、船主や運航者は原則として清掃費用や損害賠償の責任を負うとされました。さらに、自然環境の回復費用(自然資源損害)や、営業損失など、補償の対象も大幅に拡張されました。その結果、事故一件あたりの賠償額は、従来とは比較にならないほど高額になったのです。 [en.wikipedia.org]

こうした高額責任を現実に履行させるために導入されたのが、COFR制度です。OPA 90は、一定規模以上の船舶が米国の水域を航行・寄港するためには、「最悪の油濁事故が起きた場合でも、法律で定められた限度額まで支払える財務的裏付け」を事前に示さなければならないと定めました。この「支払能力の証明」が、Certificate of Financial Responsibility(COFR)です。COFRは、米国沿岸警備隊の National Pollution Funds Center(NPFC) によって発行されます。 [en.wikipedia.org], [uscg.mil]

制度の発想は非常に明確です。事故が起きてから政府や納税者が尻ぬぐいをするのではなく、最初から民間の船主・運航者に支払能力を持たせ、その証明ができない船は米国に入れない、という考え方です。COFRを持たない船は、米国港への入港拒否や拘留、罰金の対象となります。 [en.wikipedia.org]

まとめると、US COFRが要求されるようになった経緯は、Exxon Valdez事故によって「保険や賠償能力が不十分な船が米国海域に入ること自体がリスクである」と認識され、その結果、OPA 90によって「事前に支払能力を証明できない船は航行させない」という制度が作られた、という流れです。COFRは保険証券そのものではなく、「最悪の油濁事故が起きても、必ず払える」という国家に対する約束を、書面で可視化した制度だと言えます。