お久しぶりです。
前回の投稿からかなり間が空いてしまいました。(汗)
お盆も明けて暑さが落ち着くかと思いきや、東京ではまだ夏の厳しさが残っているようです。皆さまも体調には十分お気をつけください。
さて、本題に入り今回は、船員の「働く権利」を守るために制定された MLC条約(Maritime Labour Convention, 2006) についてお話します。
初めにMLC条約とは?
MLC条約は2006年に国際労働機関(ILO)で採択され、2013年に発効した比較的新しい国際条約です。
正式名称は「Maritime Labour Convention, 2006」、日本語では「2006年の海上労働条約」と呼ばれています。
海運業界では SOLAS条約(海上人命安全条約)、MARPOL条約(海洋汚染防止条約)、STCW条約(船員資格・訓練条約) と並び、「海運の四本柱」の一つに数えられています。
この条約が目指しているのは、世界中の船員が どこの国籍であっても、どこの船に乗っていても、一定の労働条件が保障されること です。
従来、船員の労働条件を定める条約は数多く存在しましたが、その多くは実効性に欠け、国ごとにバラバラの運用がされていました。
その結果、船員の長時間労働や過酷な労働環境が問題となり、国際的にも「船員の人権を守るルールの統一」が求められるようになりました。
この流れを受けて、ILOが既存の条約を統合・改正する形でまとめたのがMLC条約です。
つまり、MLC条約は「船員の権利章典(Seafarers’ Bill of Rights)」とも呼ばれる、画期的な国際ルールといえます。
MLC条約の主な内容以下の通り大きく分けて次の5つの分野を規定しています。
- 船員が船で働くための最低要件
・最低年齢の基準(原則16歳未満は乗船不可)
・健康診断の実施義務
・適切な訓練・資格の保持
- 雇用条件
・船員雇用契約の明確化
・給与の支払いと送金の仕組み
・労働時間・休息時間の基準
・有給休暇の付与
・契約終了時の帰還
- 居住区・娯楽施設・食事
・居住区の広さ・換気・照明・騒音対策の基準
・娯楽施設の整備
・食事・飲料水・給食の質と衛生の確保
- 健康保護・医療・福祉・社会保障
・船内での応急医療体制
・陸上医療へのアクセス
・船員の福祉施設(通信・娯楽・休養など)
・社会保障制度(保険・年金等)の適用
- 遵守と施行
・旗国による「MLC証書」の発行と定期検査
・港湾国による監督(Port State Control)
・船員が苦情を申し立てる仕組みの整備
MLC条約の導入により、船員の労働環境は世界的に改善されつつあります。
たとえば、以前は船員への給与未払い、過重労働による健康被害が深刻だったようですが、MLC条約の履行によってこうした問題への監督が強化されました。
また、労働条件、職場環境の改善は船員の士気を高め、結果的にヒューマンエラーの防止や安全運航に繋がると私は考えます。
MLC条約は単なる条約にとどまらず、船員の尊厳や人権を守るための大切な基準です。
私は船員部の一員として、この条約の内容を理解し、船員の方々が安心して働けるように支援していくことが使命だと感じています。
船員なしでは船は動きません。そして船員の労働環境が整うことは、海運業界全体の持続的な発展に繋がると、私は感じております。
日々勉強!!

村上 琢磨
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