ピーターの法則から考える、評価とマネジメントのズレ

会社という組織では、結果を出した人ほど評価され、昇進していく。
少なくとも、そういう仕組みになっている。

ただ、その流れを見ていて、少し引っかかることもある。

ローレンス・J・ピーターが指摘した「ピーターの法則」は、
人は昇進を重ねることで、やがて自分の能力や適性を超えた職位に到達し、
その結果、その役職としては十分に機能しなくなる、という考え方だ。

評価や昇進が、どうしても「これまで何ができたか」に基づいて行われる以上、
「次に求められる役割に向いているか」は、後回しにされやすい。

たとえば、海運会社の営業部門を考えてみる。
個人として優れた成績を上げた人が、あるいは外部環境の影響で偶然成果を出した人が、そのままマネージャーになることがある。

しかし、個人で稼ぐ力と、チームをまとめて成果を出す力は、必ずしも同じではない。
部下を育て、判断を委ね、全体として利益を生み出す。
その役割を前提にすると、今まで評価されてきた強みが、そのまま通用しない場面も出てくる。

船舶管理のような専門性の高い部門では、この構造はさらに分かりやすい。
技術力の高い担当者が、その技量を評価されてマネージャーになる。
けれど、組織運営や人への関心が伴わなければ、技術は本人の中に留まり、次の世代に引き継がれない。

そこでは、「優秀な個人」が「強い組織」に変換されない。
ピーターの法則が言っているのは、たぶんこの断絶のことだ。

加えて、仕事の中身とは別のところで評価を得る人も、現実には存在する。
上位者への対応がうまい人、空気を読むのが巧みな人。
そうした要素自体を否定したいわけではないが、それが昇進の主因になると、管理職としての適性とのズレは、より露骨に表れてくる。

では、どうすればいいのか。

一つは、成果と昇進を切り分けて考えることだ。
個人の営業成績や専門技術は、報酬や評価で正当に扱えばいい。
必ずしも、職位を上げることで報いる必要はない。

もう一つは、役職ごとに「何を期待しているのか」を、もう少し正直に言語化することだ。
責任、意思決定、対人関係、組織を背負う覚悟。
それが仕事内容である以上、本人が向いていないと感じる選択肢も、あっていいはずだ。

最後に、これは少し言いにくいが、
上に立つ人に求められるもののすべてが、教育で身につくわけではない。
知識や手法は学べても、価値観や人への向き合い方、胆力のような部分は、後から簡単に補えるものではない。

ピーターの法則は、「誰が無能か」を暴く話ではない。
評価の仕組みと、期待の置き方が、少しずれていることを教えてくれる話なのだと、まあ、そんなふうに思っている。

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