ブレイクバルク船、いわゆるデッドウエイト14,000トン前後の在来船を新造するので、7年から8年間ぐらい傭船しないかという提案を受けました。建造費を負担せず、最新の本船を手に入れられ、本船を所有するリスクを回避できるので良い提案だと思うのですが、どう考えたらよいでしょうか?


まず理解すべきなのは、この提案が在来船市場における「標準的な雇用形態」ではない、という点である。在来船の貨物は本質的に不定期であり、案件ごとに荷主、航路、荷姿が変わる。そのため、市場では短期から中期、せいぜい半年から1年程度の雇用が基本となっており、7〜8年という期間は、在来船としては明確に「長期」の領域に入る。したがって、この提案は、通常運用の延長ではなく、経営としての意思を伴う判断として扱う必要がある。

この提案を検討する際、最初に問うべきは、その7〜8年という期間に見合うだけの需要(輸送契約)を、本当に握っているのか、という点である。単に「今、仕事がある」「当面は忙しそうだ」という感覚では足りない。その需要が特定の顧客に基づくものなのか、COAや継続契約として実質的に固定されているのか、あるいは市況任せの案件の積み上げにすぎないのかによって、この提案の意味は根本から変わる。在来船で長期傭船を引き受けるということは、需要の変動リスクを自ら引き受けるということであり、需要の裏付けが弱ければ、それは安定化ではなく、市況に対する賭けになる。

次に考えるべきは、市況サイクルとの関係である。海運市場、とりわけ在来船市場は、数年単位で好不況を繰り返す。7〜8年という期間は、ほぼ確実に一度は好況と不況の両方を経験する時間幅であり、「市況が良い時だけを切り取る」ことはできない。この提案を受け入れるということは、不況局面に入ったとしても、傭船料という固定費を払い続ける覚悟をするということに他ならない。そのとき、自社の運賃水準や収益構造が、その固定費に耐えられるのか、競争力を失わずにいられるのかを、事前に具体的に想定しておく必要がある。

ここで重要になるのが、なぜ船主が7〜8年という期間を提案してきているのか、という視点である。多くの場合、この年限は運航者側の都合から生まれているのではなく、船主側の資金回収の論理から導かれている。新造船を建造するにあたり、船主は金融機関に対して、建造資金の返済、元本回収、金利支払い、最低限の利益確保を説明しなければならない。その説明が最も成立しやすい期間が、7〜8年であることが多い。つまり、この期間設定は、船主にとっては極めて合理的だが、運航者にとっても同じだけ合理的かどうかは、別途検証が必要なのである。

さらに、コスト構造の問題も見逃せない。長期傭船料には、単なる船の使用料だけでなく、船主の建造コスト、金融コスト、利益が織り込まれている。そのため、市況が下落した場合でも、傭船料は基本的に下がらない。在来船のように、本来は市況に応じて動ける柔軟性が競争力の源泉となる船型において、この固定費化が自社の収益構造にどのような影響を与えるのかを冷静に見極める必要がある。この判断は、「船を持たない」という形式を取っていても、実質的には自社船に近い固定費リスクを引き受ける判断である。

加えて、船型や技術、規制の観点も重要である。新造船である以上、今後7〜8年間、その船が競争力を持ち続けられる仕様になっているのか、環境規制や燃料規制が変わった場合のコスト負担は誰が引き受けるのか、といった点を契約レベルで確認しなければならない。在来船は汎用性が高い反面、仕様を誤ると逃げ場がなくなる。新造という選択は、長期傭船と組み合わさることで、そのリスクをさらに増幅させる可能性がある。

最後に、この提案を受け入れることが、経営責任や説明責任の観点で耐えうるかを考える必要がある。7〜8年という期間は、在来船としては長期だが、なお現在の経営陣が結果を見届け、説明し、必要であれば軌道修正を行える可能性が残る年限でもある。一方で、この判断が不況局面で裏目に出た場合、「なぜこの契約を結んだのか」を社内、株主、金融機関に説明できる構造になっているかどうかは、極めて重要である。説明できない長期契約は、将来の経営にとって負債になりやすい。

総じて言えば、この7〜8年長期傭船の提案は、条件が整えば戦略になり得る一方で、その条件を欠けば、柔軟性を失った固定費化というリスクを抱え込む判断になる。検討すべき本質は期間の長短ではなく、「その期間を支える需要と、変化に対応できる契約構造を本当に持てるのか」という一点に尽きる。