お久しぶりです。

東京では暑さも和らぎ、朝晩は冷え込み秋の訪れを感じられる季節となりました。
季節の変わり目となりますので、皆様どうぞお身体ご自愛ください。

さて、本日は「長期間乗船する外航船員は、どのようにして生活用品を準備しているのか」についてお話ししたいと思います。

寄港した際に買い出しができるのではと思われますが、実際船員さんにお話を伺うと、船種にもよりますが、昔は荷役時間(貨物の積み下ろしにかかる時間)が今よりも長く、港に滞在する間に上陸して買い出しに行くこともできたそうです。

しかし最近では荷役の効率化が進み、例えばコンテナ船などでは、荷量にもよりますが数時間で出港してしまうケースも珍しくありません。
そのため、入港してもゆっくり買い物をする時間がないことが多くなっています。

では、そんな中で船員さんはどうやって生活用品を揃えているのでしょうか。

一つ目にBonded Store(ボンデッドストア)で購入する方法です。

外航船には多くの場合、Bonded Storeと呼ばれる船内のストアが設けられています。
このストアでは、船員がタバコ・お酒・スナック類・飲み物などを購入することができます。

「Bonded Store」は関税保税倉庫扱いで、ここで販売される品は免税価格で購入できるのが特徴です。
私の同期で外航船に乗っている人は、よくこのBonded Storeで購入したタバコをお土産として持ち帰ってきてくれます。(勿論、正式に手続きがされたものです。)


二つ目に Private Order(プライベートオーダー)で注文する方法です。

Provision order(食料品の定期補給)の際に、Private order(個人注文)を併せて行う方法があります。
これは、船長を通じてShip Chandler(船用品業者)に依頼するもので、船員個人の希望に応じた日用品や嗜好品、食料を購入することができます。

陸で買い物できない環境でも、自分用のコーヒーや調味料、シャンプーなどを取り寄せられるため、船上生活を少しでも快適にする大切な仕組みです。

三つ目に入港時に購入・家族が持ち込む方法です。

入港時に港近くの売店やスーパーで購入することもありますが、時間が限られているため、実際にはあまり多くは買えません。
また、自国の港に寄港した際には、家族が生活用品や差し入れを持ってきてくれることもあります。

ただし、ここで注意が必要です。
家族など外部の方が船に物を持ち込む場合や、逆に船員や訪船者が船内の物を陸に持ち出す場合には、必ず税関への申告が必要となります。

例えば、税関申告をせずに船内でもらったケーキやジュースなどを下船時に持ち出した場合、関税法(輸出入手続き)や検疫法(植物・動物検疫・食品衛生)によりほぼ確実に違法行為となります。

つまり、たとえちょっとしたお菓子や飲み物であっても、「免税扱いの船用品」や「外国由来の原料を含むもの」を陸に持ち出すのはNGということです。

最後に訪船時の注意として、仕事での訪船や家族との面会などで船を訪れた際、船員さんのご厚意で飲み物などをもらうことがあるかもしれません。しかし、それを船外、陸に持ち出さないよう注意してください。思わぬトラブルを防ぐためにも、船内でもらったものは船内で消費するのが基本です。

外航船員は、限られた環境の中でさまざまな工夫をしながら生活しています。
Bonded Store、Private Order、家族のサポートなど、どれも長期航海を支える大切な仕組みです。

今後、こうした船での生活についても少しずつ紹介していければと思います。

日々勉強!!

村上 琢磨