世の中で最も面白い職業

不定期船の運航はロールプレイングゲーム

世の中には、あまり知られていないが、知る人ぞ知る「とてつもなく面白い仕事」があります。不定期船の運航は、私にとってロールプレイングゲームそのものです。

不定期船を運航する醍醐味は、無から有を生み出すところにあります。
どの船を使い、どこで積み、どこで揚げるのか。
どの貨物を積むのか。

それらを決め、計画を立て、実行するのは、すべて貴方です。

貴方がいなければ、その航海は生まれません。


不定期船運航者となった貴方は、まず、どこからどこへの海上輸送に需要があるかを察知することから始まります。

しかし大抵の場合、それだけでは儲かりません。
そこで、一緒に積み込む貨物を探すことになります。

世界中にいる貴方の仲間に、最初に察知した貨物と同じ港で積まれ、同じ港で揚げられる貨物がないか問い合わせを行います。

もし無ければ、最初に察知した貨物が積まれる港に近い港で積まれ、同じく、揚げられる港に近い港で揚げられる貨物を探すことになります。

寄港する港の数が増えるほど、運航収益は減ります。
この点に注意しながら、貨物を集めていく必要があります。


貨物を集める一方で、それらを効率よく積み込める貨物船を、世界中から探します。

大きな船は傭船料も高く、燃費も悪く、港湾経費も高くなります。
そのため、貨物船の選定は慎重に行われます。

貴方が信頼されている運航者であれば、貨物船のオーナーたちとは、太いパイプがあることでしょう。


少し視点を引いてみましょう。

船は、すでにそこにあります。
しかし、航海はまだ存在していません。

貨物も、世界のどこかに点在しています。
それでも、輸送はまだ成立していません。

結果は最初から確定しておらず、常に不確実性が付きまといます。
その不確実性をどこまでコントロールできるかが、運航者の腕前です。

そして最後にものを言うのが、仲間ネットワークの価値です。


貨物の輸送契約と、貨物船の傭船契約が決まった段階で、運航収益は、ほぼ確定します

なぜ「ほぼ」なのかを説明しましょう。

航海中に台風などの悪天候に遭遇することもありますし、ごく稀ですが、海賊に襲われることもあるからです。

貴方は、これら海上輸送特有のリスクをうまく回避し、無事に航海を完了させ、仲間と利益を分け合います。


残念ながら、計画通りに貨物の輸送契約が締結できなかったり、計画通りの貨物船が傭船できなかったり、あるいはその両方が重なったりすることもあります。

その場合、航海が開始される前から、運航収支がマイナスになることもあります。

しかし、そこで諦めるわけにはいきません。

仲間を総動員し、これから寄港する港や、その近くの港で積みと揚げができる貨物を探し、運航収支の改善に努めます。

航海開始前には運航収支がマイナスであったにもかかわらず、航海終了後には大きくプラスに転じる、そんな大逆転の結論に至ることもあります。

ひとえに、運航者の持つ仲間ネットワークと腕次第です。


膨大な組み合わせの中から、貨物と貨物船をマッチングさせ、大きな利益を作り出す不定期船の運航事業は、まさにロールプレイングゲームそのものです。

私は、世の中で、これほど面白い職業を知りません。