再保険をかける保険会社は、なぜロイズに投資するのか
――守られる側が、支える側に回る理由――
ロイズにお金を出している「投資家」と一口に言っても、その顔ぶれはさまざまです。年金基金のような長期資金もあれば、金融機関、投資会社、個人投資家もいます。ロイズは、保険リスクに対してお金を出したい人たちが集まる市場だからです。
その中で、ひときわ存在感を持っているのが、ふだん自分たちで保険を売り、そのリスクに備えるために再保険をかけている保険会社です。ここで、多くの読者は首をかしげるかもしれません。
「再保険をかけて守ってもらっている側の保険会社が、なぜ再保険の世界にお金を出すのだろう」と。
この疑問はもっともです。再保険とは、保険会社が自分たちのリスクを軽くするためにかける「保険」です。大きな災害や想定外の事故が起きたときでも、会社が倒れないようにするための安全網です。その安全網に守られている側が、同じ市場に投資家として参加しているのは、一見すると不思議に映ります。
しかし、ここにロイズという市場の面白さがあります。再保険は、保険会社にとって「守ってもらう仕組み」であると同時に、「保険料として集めた資金が、どのようなリスクに、どの程度の利回りを伴って使われているのか」を知る場でもあるのです。再保険を買う立場と、再保険にお金を出す立場は、同じ市場の表と裏だと言えます。
保険会社がロイズ市場で再保険をかけるとき、保険会社は再保険料を支払います。それは確かにコストです。しかし一方で、保険を販売して得た資金のうち、将来の支払いに備える部分を慎重に確保したうえで、その一部をロイズ市場に投じれば、今度は同じような再保険リスクから生まれる利益を受け取る側に回ることができます。
こうして見ると、保険会社は「再保険を買うだけの存在」ではありません。自らが日々支払っている再保険料の裏側で、そのリスクがどのように運用され、どの程度の利益を生んでいるのかを、自ら投資家として確かめている存在でもあるのです。再保険をかける保険会社が再保険に投資することは、矛盾ではありません。むしろ、自分たちが日々扱っているリスクを、別の角度から引き受け直す、きわめて現実的な行動だと言えるでしょう。
実務経験に基づく参考情報(内容の正確性は保証されません) / Reference Information Based on Practical Experience
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